以下に当てはまるみぞおちの痛み・胃痛があったら当院へ
- 急に痛みが出た
- 食後に痛みを感じる
- 発熱や吐き気を伴った痛み
- 痛みが何日も続いて治らない
- 激しい痛みではないが、断続的に続いている
- 特定の食べ物や飲み物を摂取すると痛みが生じる
- 夜間、早朝など特定の時間帯に痛みが出る
- 空腹時や満腹の時になると痛みが出る
- 激しいストレスを感じると痛みが出る
- 市販の痛み止めを飲むと痛みが出る
上腹部の中央、いわゆる「みぞおち」に生じる痛みは、主に胃腸・肝臓・胆のう・膵臓などの消化器疾患によって引き起こされます。
しかし、胸部・心臓・尿管などの異常が原因となる場合もあります。
そのため、痛みが生じる部位だけでなく、痛みの性質や随伴症状などを正確に把握することが重要です。
みぞおちの痛みとストレスの関連性
過度な精神的ストレスは、自律神経のバランスが乱れさせやすく、胃酸の過剰分泌や胃粘液の分泌低下を引き起こし、その結果、胃や十二指腸の粘膜がダメージを受けやすくなるとされています。
また、エアコンや暖房の効いた室内と屋外との温度差も身体的なストレスとなり、自律神経のバランスを乱す要因になります。
これらの影響により、胃やみぞおち周辺に痛みが生じることがあります。
胃・みぞおちの痛みを引き起こす代表的な疾患
みぞおちの痛みや胃痛の原因は、必ずしも消化器系疾患に限らず、例えば心筋梗塞や尿路結石といった消化器以外の疾患が原因であることもあります。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃の内容物、特に胃酸が食道に逆流することで食道粘膜に炎症を生じる疾患です。炎症に伴って、みぞおちの痛みや胃痛などの症状が現れることがあります。
発症には、過体重やヘリコバクター・ピロリ菌非感染、食道裂孔ヘルニアとの関連が指摘されています。近年では食生活の欧米化やヘリコバクター・ピロリ菌感染率の低下などを背景に、発症率が増加傾向にあります。
症状は、夜間や空腹時、あるいは横になった時に症状が起こりやすいことが特徴です。
機能性ディスペプシア
逆流性食道炎や胃がんなどの明らかな疾患が見つからないにもかかわらず、胸焼け、胃痛、慢性的なみぞおちの痛みなどの症状が長期間続く場合には、機能性ディスペプシアの可能性も疑われます。
この疾患は、検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、症状が持続する点が特徴で、内視鏡検査などを行っても肉眼的な異常が確認されないのが診断の前提となります。
急性胃炎
ウイルス感染、過剰なアルコール摂取、暴飲暴食、トウガラシなどの香辛料の過剰摂取、薬の副作用などが原因となります。典型的には、みぞおちの痛み・胃痛などの症状が見られますが、通常、数日で回復します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌の感染、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)、あるいはステロイド薬の服用などに関連して、胃や十二指腸に潰瘍が生じる疾患です。みぞおち周辺に鋭い痛みや胃痛、重苦しさなどの症状が現れるのが特徴です。
胃潰瘍では、食べ物が胃に入ると潰瘍が刺激され、食事中や食後に痛みが生じます。一方、十二指腸潰瘍は、空腹時に痛みが増悪ことが多いのが特徴です。潰瘍が重篤化すると、出血や穿孔を引き起こすことがあります。
胆石症
胆石は、肝臓で生成された胆汁の成分が固まって出来た結石のことを指します。多くの場合無症状ですが、胆のうが収縮した際に胆石が胆嚢の出口付近を閉塞すると、みぞおちに激しい痛みが生じることがあります。痛みは右肩や背中に痛みが放散することもあります。
胆のうは脂質の多い食事で収縮しやすいため、『脂っこい食事を摂った直後に激しいみぞおちの痛みが出現した』というのが典型的な症状の現れ方になります。
胆のう炎
胆のう炎は、胆のうに炎症が生じる疾患で、みぞおちの激しい痛みや発熱が現れやすいのが特徴です。原因の多くは胆石であり、胆石が胆のうの出口を閉塞することで炎症が引き起こされます。
一方で、頻度はそれほど高くありませんが、胆石を伴わずに発症する胆のう炎もあり、これは「無石性胆のう炎」と呼ばれます。発症には、胆のうの血流障害が関係していると考えられています。
治療には、絶食・点滴・抗生物質の投与といった保存的治療が行われますが、炎症の改善が乏しい場合や再発を繰り返す場合には、外科的な胆のう摘出術が検討されます。
総胆管結石症・急性胆管炎
胆石が胆管に落下したり、総胆管という部位に結石が出来たりすると、みぞおちの激しい痛みや胃痛を引き起こすことがあります。これを「総胆管結石症」といい、速やかな治療が必要な疾患です。
総胆管結石が胆管を閉塞すると、胆汁の流れが滞り、そこに腸内細菌などが感染することで急性胆管炎を発症します。急性胆管炎は重篤化しやすく、敗血症などを引き起こす可能性もあるため、迅速な治療が必要です。
内視鏡治療が進歩した現在では、多くの場合、内視鏡的治療での治療が可能となっています。
急性膵炎
膵臓に炎症が生じる疾患であり、激しい腹痛と背部痛が伴うことが多いです。主な原因としてはアルコールの過剰摂取が挙げられますが、胆石が胆管に落下し膵管を閉塞することで起こる「胆石性膵炎」や、重度の脂質異常症(特に中性脂肪が著しく高い場合)も原因となります。
治療においては、絶食と大量の輸液を行いながら全身管理を行うことが非常に重要であり、入院での治療が必要となる疾患です。重症化すると生命に関わる事態となり、現代の医療をもってしても、10%程度の死亡率が報告されています。
心筋梗塞
心臓の筋肉(心筋)に血流を供給する冠動脈がつまって、心筋が壊死する疾患です。突然発症することが多い疾患ですが、生命に関わることも多いため、早急な対応が必要です。典型的な症状として前胸部の痛みがありますが、場合によっては上腹部痛や吐き気が出ることもあります。
尿管結石
左右の腎臓から膀胱に尿を運ぶ「尿管」に結石が詰まることでおこる疾患です。
症状としては、激しい腰痛、血尿などが一般的ですが、みぞおちの痛みや吐き気などの症状が目立ち、消化器疾患と間違えられることもあります。
結石が小さい場合は、自然排出が期待できますが、結石が大きい場合や、尿路を閉塞して水腎症という状態に陥っている場合には、泌尿器科的な治療が必要となります。
みぞおちの痛みを予防する方法・治療方法
みぞおちの痛みは以下のような対応で予防・改善が期待できる場合があります。
ただし、症状が強い場合や長引く場合には、背後に上記のような重篤な疾患が隠れている可能性も考えられますので、ご無理されず、早めの受診をおすすめいたします。
食生活の改善
暴飲暴食に加えて、朝食を抜いたり、遅い時間に食事を摂る習慣も、胃腸に負担をかける原因になります。可能な範囲で規則正しい食事をして、腹八分目を心がけましょう。
特に、就寝前の高脂肪食品の摂取は控えた方がよいとされています。
禁煙・節酒
喫煙は胃粘膜の血流を低下させ、胃酸の分泌を促進することで、みぞおちの痛みを引き起こす可能性があります。また、過度なアルコール摂取も同様に、みぞおちの痛みの原因となりますので注意が必要です。
食べ物の鮮度・生水に気を配る
気温や湿度が高い6から9月にかけては、食中毒のリスクが高まります。そのため、食材は冷蔵庫で適切に保存し、鮮度を保つように心がけましょう。あわせて、まな板や包丁などの調理器具を清潔に保つことも大切です。
また、海外旅行中は生水の摂取は避け、屋台で販売されている飲料や、使用されている氷にも注意が必要です。
ストレス管理
ストレスは胃酸分泌や自律神経に影響し、みぞおちの痛みの一因となります。
おいそがしい方も多いかと思いますが、質の高い睡眠を確保し、しっかりと休息をとることが大切です。
また、適度な運動習慣を取り入れることは、心身によい影響をもたらし、不調の予防にもつながるため、おすすめです。