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消化器内科

消化器内科で診る症状

消化器には、食道や胃・十二指腸をはじめ、小腸や大腸、膵臓、肝臓、胆のう、胆道など、幅広い臓器が存在します。各臓器に起こる疾患は多種多様です。症状としては、胃の不快感、食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、飲み込みにくさ、便秘、下痢、血便、体重減少などが挙げられます。これらの症状を訴えて受診される方が多いですが、貧血や発熱などの症状を伴っているケースも存在します。症状に不安がある方は、消化器内科の専門医に相談されることをお勧めします。
消化器がんの早期発見と治療は非常に重要で、正確な診断と適切な対処が不可欠です。当院では、最新の内視鏡検査や超音波検査(エコー検査)、迅速血液検査を受けて頂ける体制を整えております。以下の症状がある方は、お気軽にご相談ください。

  • 胃の不快感
  • 胃痛
  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 胸焼け
  • 下痢
  • 便秘
  • 血便
  • 飲みこみづらい
  • 全身の倦怠感
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 黄疸
  • 健診で異常を指摘された
    (肝機能障害や便潜血検査、ピロリ菌感染検査など)

食道に起こる疾患

逆流性食道炎

胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道粘膜に炎症が生じる疾患です。主な症状としては、胸焼け、胃の不快感、胸の痛み、呑酸(酸っぱいものが込み上がってくる)、喉の違和感、げっぷ、そして長引く咳などが挙げられます。
逆流性食道炎の原因は主に、加齢、欧米化した食生活、習慣的な喫煙、飲酒、そして肥満で、ここ数年で患者数が増加している傾向にあります。

食道裂孔ヘルニア

胸とおなかは横隔膜という膜で区切られていますが、横隔膜には食道が通る孔があり、この孔を食道裂孔といいます。
一方、ヘルニアとは臓器や組織が本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態を指します。胃の一部が食道裂孔を通って胸部に脱出した状態を食道裂孔ヘルニアと呼びます。
胸焼け、呑酸、そしてゲップなどの症状が見られますが、軽度のヘルニアの場合は、症状が現れないことも少なくありません。

食道アカラシア

食道アカラシアは、食道と胃との境目にある下部食道括約筋という筋肉がうまく緩まなくなったり、食道の正常な蠕動運動が消失することで、食道から胃への食べ物などの通過障害を引き起こす病気です。
食べ物が胃に到達せずに蓄積されることから、口から食べ物が逆流し、嘔吐や喉のつかえ、胸の痛み、咳などの症状が起こります。食道の筋肉に分布する神経の一部が失われることで筋肉の緊張が緩まなくなることにより起こっていると考えられていますが、自己免疫性の病態、遺伝的背景、ウイルス感染、好酸球というタイプの白血球の浸潤などが関連していると疑われていますが、はっきりした原因は分かっていません。

食道がん(扁平上皮がん)

食道がんはそこまで頻度の多いがんではありませんが、本邦で頻度の高い「扁平上皮がん」というタイプのがんは飲酒や喫煙との強い関連があり、よく飲酒される方や喫煙習慣のある方は注意が必要です。
中でも「お酒を飲むとすぐ赤くなる方(フラッシャーといいます)」や「以前は赤くなっていたが飲み続けるうちに赤くならなくなった方」は特にリスクが高いと考えられています。また飲酒と喫煙、両方の習慣がある方はより危険性が高いということも知られています。
食道がん予防のため禁煙・節酒をおすすめします。食道がんは進行すると、ものを飲み込んだ時に喉や胸でつかえる感じがしたり、しみる感じを自覚しますが、早期の食道がんではほぼ自覚症状はありません。早期発見すれば内視鏡治療での治癒も期待出来ますので、飲酒や喫煙を習慣にしている方は、定期的な胃カメラ検査を受けて頂くことをおすすめします。

食道乳頭腫

食道乳頭腫は、食道に発生する良性の隆起性病変で逆流性食道炎やヒトパピローマウイルス感染との関連の報告もありますが、はっきりとした原因は分かっていません。通常は無症状で、治療が必要なケースもほとんどありません。

食道グリコーゲン・アカントーシス

食道粘膜にグリコーゲンを豊富に含んだ細胞が増えて白くてまるい平らな隆起を形成したものをグリコーゲン・アカントーシスといいます。症状を来すことはなく、特に治療する必要はありません。

バレット食道(バレット上皮)

バレット食道とは、食道と胃の接合部にある食道粘膜(扁平上皮)が、胃の円柱上皮に置き換えられた状態を指します。
原因としては食道内への胃酸や胆汁の逆流の関与が疑われています。バレット食道は長さが非常に重要で、長さによって2種類に分類されます。長さが3cm以上あるものはLSBE(長いバレット食道)といわれ、「食道腺がん」というタイプの食道がんのリスクが高いというデータがあります。
一方、長さが3cm未満のものはSSBE(短いバレット食道)といわれますが、こちらはそこまで食道がんのリスクは高くなく、特に長さが1cm未満の場合には発がん率はほとんどないとされています。
そのため特に長いタイプのバレット食道(LSBE)を指摘された場合は、定期的な内視鏡検査を受けるのが望ましいです。

バレット食道がん

バレット食道から生じる食道がん(腺がん)です。一般的な食道がん(扁平上皮がん)と同様に、早期に発見できれば内視鏡治療での治癒も期待できます。初期段階では症状がほとんどないため、定期的な内視鏡検査が不可欠です。

食道カンジダ(カンジダ性食道炎)

食道カンジダは、食道にカビ(真菌)の一種であるカンジダが感染した状態で、内視鏡検査をされた方の約1%に見つかると報告されています。
制酸薬、抗生物質、胃切除後、逆流性食道炎、アカラシア、膠原病などが危険因子とされています。軽症例では無症状なことも多いですが、重症例では喉の痛み、飲み込みにくさ、胸がひりひりとするような感覚、吐き気などの症状を認めることがあります。症状がある場合や中等症以上の場合には抗真菌薬という薬の内服をすることもあります。

好酸球性食道炎

アレルギー物質の刺激によって、食道の粘膜に好酸球というタイプの白血球が浸潤し、慢性的な炎症を起こした結果、食道の運動障害を来したり、知覚異常を来す慢性のアレルギー疾患を指します。近年、本邦でも報告が増加しています。
原因は十分には解明されていませんが、好酸球性食道炎を引き起こすアレルギー物質として、牛乳、小麦、卵、大豆、ピーナッツなどのナッツ類、海産物の6種類が注目されており、特に牛乳と小麦が原因となっている頻度が高いとの報告があります。
また、成人ではこうした食物アレルギーに加えて、空気中の花粉などが原因となっている場合もあると考えられています。症状としては嚥下困難感や食物のつかえ感などの症状が起こります。
診断には内視鏡検査による食道粘膜の生検が必要です。治療には薬物療法や食事療法が行われますが、症状が重篤な場合はステロイドを使用する場合もあります。

胃に起こる疾患

胃潰瘍

胃潰瘍は胃の粘膜がただれて欠損し、胃壁が深く傷ついた状態を指します。食後にみぞおちが痛くなったり、食欲が低下したり、背中が重苦く感じたりすることで発見されるケースが多いです。吐血や下血(黒色便)が見られることもあります。悪化する原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、鎮痛剤の内服、喫煙、ストレスなどがあります。
胃カメラ検査により診断され、制酸剤や胃粘膜保護薬による内服治療が行われます。出血をきたしている場合などには、内視鏡を用いた止血術等の処置が必要な場合もあります。ヘリコバクター・ピロリ菌の関与が疑われる場合は、精査を行い感染の有無を診断します。
胃潰瘍の再発リスクを低減するため、胃潰瘍の治療後にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療をおすすめすることが多いです。

慢性胃炎

慢性胃炎の定義ですが、長期間にわたって胃炎が持続する状態です。主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌感染であり、胸焼けや胃もたれの症状が現れることもありますが、ほとんどの場合、無症状です。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が見つかった場合、除菌治療を行います。
その他、胃酸を抑制する薬や胃粘膜を保護する薬、消化管機能を促進する薬などを用いた治療が行われることもあります。

急性胃炎

急性胃炎とは、胃の粘膜が急激に炎症を起こす状態です。主な原因は、ウイルス感染や過剰なアルコール摂取、ストレス、アレルギー、薬の副作用などであり、ほとんどが自然に治癒します。必要に応じて、制酸剤・胃粘膜保護薬などによる治療が行われます。

胃びらん(びらん性胃炎)

胃粘膜が浅く傷ついている状態です。自覚症状はない場合も多いですが、胃痛などを伴う場合には、胃薬などを用いた薬物療法が行われます。

萎縮性胃炎

慢性胃炎が長期にわたって続き、胃粘膜が萎縮してしまった状態を萎縮性胃炎といいます。慢性的な経過をたどるため自覚症状がないことも多いですが、胃がんの発症リスクが高い状態と考えられるため、胃カメラなどで適切な定期検査をしていくことが重要と考えられます。
主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症ですが、自己免疫が関与して起こることもあります。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染症

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は、胃粘膜に生息する菌で、感染状態が続くと、慢性萎縮性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの発症リスクが高くなります。
日本ヘリコバクター学会による「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」ではピロリ菌の除菌治療が強く推奨されていますが、特に過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍にかかったことのある方では潰瘍の再発を予防するのに除菌療法が非常に有効です。また、特に年齢のお若い方ではピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクが大幅に低減するという報告があります。
ただし、除菌後も胃がんのリスクが無くなるわけではないので、除菌に成功した後でも、定期的な胃カメラ検査を受けて頂くことが望ましいです。

胃がん

厚生労働省が2024年9月に公表した「2023年の人口動態統計」によると、胃がんは部位別がん死亡数で男性では3️番目、女性では5番目のがんとなっています。
胃がんは、胃粘膜の細胞ががん化して発生しますが、時間の経過とともに、胃の内腔側に増殖するだけでなく、粘膜の下側にも根を張るように増殖し、リンパ節や肝臓など他の臓器に転移を来します。また、お腹の中にがん細胞がひろがったり(播種・がん性腹膜炎といいます)、膵臓や大腸など隣接する臓器に浸潤しながら進展していくこともあります。胃がんが進行して大きくなるとみぞおちの痛みや胸焼け、吐き気、食欲不振、体重減少などの症状が出てきますが、早期の段階では自覚症状はほとんどありません。
早期に発見すれば、身体への負担が少ない内視鏡治療で根治できる可能性も高いため、胃カメラを受けたことがない方や、最近受けておられなかった方、血縁の方に胃がんの方がいらっしゃる方は是非一度内視鏡検査を受けて頂くことをおすすめします。
胃がんのリスク要因としてはヘリコバクター・ピロリ菌感染、喫煙、塩分の多い食事などが挙げられます。
特にヘリコバクター・ピロリ菌感染は胃がんとの関係が深いと考えられており、年齢が若いうちに除菌治療をすることで大幅に胃がんのリスクを下げることが出来るとする報告もあります。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染を指摘された方は定期的な胃カメラを受けて頂くことをおすすめします。

胃底腺ポリープ・過形成性ポリープ

胃カメラでよく発見される胃ポリープとして、胃底腺ポリープと胃過形成性ポリープがあります。両方とも通常、自覚症状はなく、健康診断で発見されることが多いです。
胃底腺ポリープは、ピロリ菌との関連性が低く、がん化のリスクも低いと考えられており、通常は治療の必要はありません。制酸剤を継続的に服用しているとポリープが大きくなったり増殖したりすることがあります。
一方、過形成性ポリープは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が原因となって生じることが多いとされています。がん化するリスクのあるポリープですが、がん化率はそこまで高くないと考えられています。
ポリープからの出血を来したり、増大傾向が認められる場合などにヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法を行う場合もあります。除菌療法を行うと約半年後には80%のポリープが縮小または消失するとされています。
ポリープが大きくなりがん化が疑われたり、出血を繰り返したりする場合には、内視鏡手術によるポリープの切除治療をすることもあります。

機能性ディスペプシア

内視鏡検査で原因が特定できないにもかかわらず、胃もたれやみぞおちの不快感、そして痛みといった症状を抱えた状態です。胃の内側に異常が見られなくても、機能的な問題がある状態になっています。
治療法としては、これまでの生活習慣の改善をはじめ、胃酸を抑える薬、さらには消化管の運動を整える薬を用いた薬物療法などが選択されます。

アニサキス症

アニサキス幼虫という寄生虫が寄生した魚介類を生食することで、アニサキス幼虫が胃腸に噛みつき、症状が引き起こされます。アニサキス幼虫はサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。
11月から4月の冬季に多いですが、広域流通の発達などもあり6月から9月の夏季にも発生しています。典型的な症状としては生の魚介類を摂取した後、数時間から数日後に持続する腹痛や差し込むような痛みが起こります。
吐き気、嘔吐、発熱を伴うこともあります。内視鏡でアニサキス虫を除去することで速やかに痛みがおさまる場合が多いです。

十二指腸潰瘍

代表的な症状として、空腹時のみぞおちの痛み、食欲不振、吐血、黒色便などが挙げられます。原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が特に重要で、他に鎮痛剤の内服、喫煙、ストレスなどが関係することがあります。
胃カメラ検査により診断され、制酸剤や胃粘膜保護薬による内服治療が行われます。
出血をきたしている場合などには、内視鏡を用いた止血術等の処置が必要な場合もあります。ヘリコバクター・ピロリ菌の関与が疑われる場合は、精査を行い感染の有無を診断します。十二指腸潰瘍の再発リスクを低減するため、潰瘍の治療後にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療をおすすめすることが多いです。十二指腸の中でも、胃の近くにできる球部は壁が薄いため、穿孔しやすい傾向があります。

十二指腸炎

十二指腸の粘膜障害です。十二指腸潰瘍ほど深くはなく、ほとんど自覚症状を伴いません。
ただし、症状が顕著に現れる場合には、制酸剤などの胃薬が必要です。過剰なアルコール摂取やストレス、胃酸の過剰分泌などが原因で発症します。

大腸に起こる疾患

感染性腸炎・食中毒・急性胃腸炎

主な症状は下痢、血便、腹痛、嘔吐、発熱などですが、皮疹や関節痛が見られる場合や、無症状の場合もあります。
主な原因はノロウイルスやロタウイルスなどといったウイルス、あるいはサルモネラやカンピロバクター、下痢原性大腸菌(O-157など)などといった細菌に感染することで起こります。
ウイルス感染の場合でも、細菌感染の場合でも多くは自然軽快します。下痢や嘔吐、食欲不振などで脱水になっている場合には点滴治療が必要なこともあります。
症状に応じた対症療法が行われます。細菌感染の場合にも抗菌薬は不要なことが多いですが、症状が強い場合、重篤な基礎疾患や免疫不全がある場合、また細菌性赤痢やコレラ菌の関与が疑われる場合には抗菌薬が考慮されます。

虫垂炎(盲腸)

盲腸の一部である虫垂に炎症が生じる疾患です。(一般的に「盲腸」ともよばれます。) 典型的には初期にみぞおちの不快感を覚え、次第に右下腹部へ痛みが移動します。発熱や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。
軽度の場合は抗菌薬で治療しますが、症状が深刻な場合や糞石という便が固まったものが虫垂を塞いでいる場合は手術が必要となることがあります。初期には他の病気と区別がつかないことも多く、注意深く症状の経過をみる必要があります。

大腸ポリープ

大腸粘膜からできて、腸の内側に向かって隆起する病変です。自覚症状はほぼなく、便潜血陽性を契機として大腸内視鏡で発見されたり、他の目的で大腸カメラをした際に偶然見つかることなどが多いです。
大腸ポリープには様々な種類がありますが、「腺腫」というタイプのポリープや「SSL」というタイプのポリープは時間経過を経て増大するにしたがって、がん化していくリスクが上昇していくことが知られています。腺腫やSSLが全てがん化するわけではありませんが、内視鏡でポリープを切除しておくことで、将来的な大腸がんの死亡リスクを低減できるということが実証されています。
サイズがある程度大きなもののみを切除するという考え方もありますが、がん化リスクのあるポリープは小さなものでも全て治療し、ポリープのない状態(クリーンコロンといいます)にしておくべきだとする考え方もあります。
大腸がんは40歳代から罹患率が高くなり、50歳代から更に増加します。
血縁に大腸がんにかかられた方がいらっしゃる方、検診で便潜血陽性を指摘された方、血便や便通障害(便秘や下痢)、腹痛など気になる症状がある方は一度大腸内視鏡検査を受けて頂くことをおすすめします。

大腸がん

大腸がんは、日本においてすべてのがん患者のうち、2番目に死亡者数の多いがんとなっています。特に女性では最も死亡者数の多いがん、男性でも第3位のがんとなっており、いかにして大腸がんで苦しむ方を減らしていくのかということが社会的な課題にもなっています。
大腸がんは進行するまでほとんど症状がないため、症状が出た時には、外科的治療や抗がん剤治療といった身体への負担が大きな治療が必要となることが多く、完全に治癒することが難しくなっている場合も少なくありません。
大腸がん検診などで便潜血検査が陽性となった方や血便が出た方は勿論、便秘・下痢が続く方、便が細くなった方、腹痛・お腹の張りが気になる方、血縁の方に大腸がんにかかられた方がいらっしゃる方は、是非とも大腸内視鏡検査を受けて頂くことをおすすめいたします。
大腸内視鏡検査は大腸がんを発見できるだけでなく、大腸がんに進展していく可能性のある大腸ポリープ(腺腫性ポリープなど)を内視鏡手術によって治療することが出来るという大きなメリットがあります。
適切な間隔で定期的に大腸内視鏡検査を受けて頂くことで、実際に大腸がんの死亡リスクが低減出来ることが証明されています。

腸閉塞(腸閉塞・イレウス)

腸閉塞とは、何らかの原因で、腸の内容物の流れが止まり、通過が障害がされている状態をさします。症状としては腹部膨満、排ガス・排便の停止、腹痛、吐き気、嘔吐などが現れます。腸閉塞は2つに分類されます。
ひとつは開腹手術後の腸の癒着や大腸がんなどによる物理的な閉塞でおこるもので狭い意味での「腸閉塞」といい、もうひとつは腸が麻痺して動かなくなることで発症するもので「イレウス」と呼ばれます。治療は原因や状況に応じて行われますが、手術療法が必要となることもあります。

大腸憩室

大腸憩室は、大腸粘膜の一部が腸壁の外に袋状に突出した状態をさします。原因ははっきりとはしていませんが、大腸内圧の上昇や腸の壁がもろくなっていることなどが考えられています。
ほとんどの場合は症状が現れません。しかし、約5%の方々には大腸憩室炎や大腸憩室出血が見られます。

大腸憩室炎

大腸憩室が炎症を起こす状態です。腹痛や発熱が主な症状で、憩室内での細菌感染や虚血性変化により、局所で痛みが起こります。治療には抗菌薬を投与します。一部の症例では、入院や絶食、点滴療法も必要となることがあります。

憩室出血

急に血便が出るのを特徴としている疾患です。腹痛は伴わないことが多いのが特徴です。リスク因子としてはNSAIDという鎮痛剤やアスピリンという血液をさらさらにする薬の服用や内臓脂肪の増加が指摘されています。
安静・絶食で自然に止血することも多いですが、時に多量の出血をきたすこともあり、入院治療が必要となることも多いです。自然止血が得られない場合の治療としては、①内視鏡を用いた止血術、②カテーテル手術による止血術、 ③外科的治療があります。

虚血性腸炎

腸に分布する血管の一時的で急激な循環障害によって、大腸粘膜に血流が供給されなくなり(虚血)、その後血流が回復することで炎症や出血、潰瘍が引き起こされる腸炎です。
まず波のある腹痛が起こり、その後に下痢をきたし、その後血便まじりの下痢が見られるというのが典型的な症状です。動脈硬化や便秘症をおもちの中高年女性に多く見られますが、若い方の発症もみられます。血管に関連する要因が関係していると、症状が悪化する恐れがあります。便秘や便通異常が再発の原因となる場合は、薬物療法を実施します。
激しい腹痛と血便という症状が現れますが、ほとんどの場合が短期間で改善しますが、時に腸閉塞を来したり、腸にあなが空いて腹膜炎を起こし、重篤化することもあります。

痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)・痔瘻(あな痔)の3タイプに分けられます。症状が軽めの場合は、食事や生活習慣、排便習慣の改善、坐剤または内服薬を用いた薬物療法で治療します。痛みや出血などの症状があり、かつ深刻な場合は、外科的治療を検討します。

潰瘍性大腸炎

大腸、特に直腸にびらんや潰瘍を来す炎症性腸疾患です。原因は不明ですが、遺伝的素因と環境因子の両者が関与していると考えられています。腸内細菌叢のバランスに乱れがあり、腸管免疫機構に問題が生じているということが知られています。
30歳以下の成人に多いですが、小児や50歳以上の方にもみられます。症状としては持続もしくは反復する粘血便・血性下痢、下痢、腹痛、発熱などが認められます。症状が悪化すると生活の質が下がり、日常に悪影響を及ぼします。適切な治療を受けることで、腸管の炎症をコントロールし、生活の質を改善することが期待出来ます。
診断には大腸カメラ検査が重要で、大腸粘膜の生検を行い、診断の参考にすることが多いです。治療方法は、内服薬を中心とした薬物療法が選択されますが、病状によっては免疫調整剤や生物学的製剤による治療、血球成分除去療法が選択されたり、複数の治療を組み合わせて治療されます。
腸管の炎症のコントロールが困難となった場合には手術治療が選択されることもあります。
炎症の範囲が大腸全体に広がる全大腸炎型、大腸の左側に広がる左側大腸炎型の方は長時間経過すると大腸がんのリスクが増加するため、定期的な大腸カメラ検査が推奨されています。

クローン病

口から肛門まで消化管のあらゆる場所で肉芽腫性炎症というタイプの炎症が起こる炎症性腸疾患です。原因不明ですが、遺伝的因子、環境因子(ウイルスや細菌などの微生物感染、腸内細菌叢の変化、食物中の抗原など)などが関与して、免疫系の異常反応が生じ発症すると考えられています。男性に多く、10歳代後半〜20歳代での発症が多いです。
腹痛や下痢、痔ろう、肛門痛などといったお腹やおしりの症状が典型的ですが、倦怠感や持続する発熱などしかないこともあります。大腸カメラ検査を行い、大腸粘膜・回腸末端(小腸の一番下の部分)粘膜を観察することが診断に重要となります。
治療方法としては、薬物療法、食事療法、血球成分除去療法などが挙げられます。炎症を繰り返すことで腸の内腔が狭くなって腸閉塞を起こした場合、腸にあなが空いてしまった場合などには手術治療が必要となることもあります。痔などの肛門病変も治療が必要となることがあります。

ベーチェット病

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍などの症状をきたす原因不明の全身性炎症性疾患です。
胃腸の症状としては、下痢、下血、腹痛(右下腹痛が多い)、体重減少などが現れます。治療は内服治療(5-ASA製剤やステロイド、免疫調整剤、コルヒチンなど)や抗TNF-α抗体などが行われますが、外科的治療が必要となることもあります。

過敏性腸症候群

腹痛と便通異常(便秘、下痢、もしくは便秘と下痢を繰り返す)が慢性的に続くものの、内視鏡検査や血液検査などでは明らかな異常を認めないという概念の症候群です。腸に分布する神経過敏、腸内細菌のバランス異常、心理社会的ストレスなどが関与しているとされています。現代社会のストレス病とも言われています。
便秘型、下痢型、交互に繰り返す混合型、分類不能型の4タイプに分けられます。
治療は生活習慣の改善や薬物療法が行われます。そうした治療の効果の効果が乏しい場合には心理療法・心身医学的治療が選択されることもあります。
症状としては重篤な疾患である大腸がんや潰瘍性大腸炎などを区別がつきにくいこともありますので、必要に応じ、大腸カメラ検査などで目で見てわかる病気がないということを確認することが重要です。

便秘 (慢性便秘症)

便が硬くて排出しにくい、排便回数が少ない、満足のいく排便ができず残便感がある、自発的な排便が週3回未満などの症状を認める状態を便秘といいます。6️ヶ月以上便秘持続している状態を慢性便秘症と言います。
便秘は原発性便秘と続発性便秘に分類されます。原発性便秘は腸の機能異常が主な原因とされ、治療としては食生活の改善や適度な運動、薬物療法などがあります。
一方、続発性便秘は、特定の疾患や薬剤の影響によって引き起こされる便秘のことをさし、原因が明確に存在します。具体的には大腸がんや炎症性腸疾患による腸管の狭窄、甲状腺機能低下症、糖尿病、パーキンソン病、強皮症といったご病気や、抗コリン薬、オピオイド(がんの痛み止めにつかう薬剤)、抗精神病薬といった薬剤が原因となります。
治療としては、原因をみきわめ適切に対応することが重要となりますが、並行して生活習慣の改善や、薬物療法が行われることも多いです。
便秘に悩まれている方は非常に多くいらっしゃいますが、症状に応じた適切な治療を受けることで、日常生活の不快感を軽減することが可能です。近年、新たな薬剤が開発されており、より効果的な治療選択肢が広がっています。お気軽にご相談ください。