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食道がん

食道がんとは

食道は口から胃へ食べ物を送る管状の臓器です。食道自体には消化機能はありませんが、粘液を分泌し、蠕動運動によって食べ物の通過を助けます。また、食道下部にある下部食道括約筋が胃内容物(食べ物や胃酸など)の逆流を防ぐ役割を果たしています。

食道がんは、食道粘膜に発生する悪性腫瘍です。そこまで頻度の多いがんではありませんが、食道周囲には重要な血管やリンパ管があり、肺・心臓・気管などの臓器と近接しているため、がんが進行すると周辺器官に浸潤したり、血管・リンパ管を会して遠隔転移危険性が高まります。そのため、注意が必要な疾患とされています。
食道がんは「扁平上皮がん」と「腺がん」に分類されます。

食道扁平上皮がん

本邦で頻度の高い「食道扁平上皮がん」は飲酒や喫煙との強い関連があり、よく飲酒される方や喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。
中でも「お酒を飲むとすぐ赤くなる方(フラッシャーといいます)」や「以前は赤くなっていたが飲み続けるうちに赤くならなくなった方」は特にリスクが高いと考えられています。また飲酒と喫煙、両方の習慣がある方はより危険性が高いということも知られています。
一方で、野菜や果物の摂取によりわずかですが発がんリスクが減少するという報告もあります。

食道腺がん

「食道腺がん」は、欧米では食道がんの過半数を占めていますが、日本では食道がんのうち数%と比較的頻度の低いタイプのがんです。
しかし、2010年頃から日本でも報告が増加しており、今後の動向が注目されています。 主な原因としては、胃酸や胆汁が食道に逆流して生じる「バレット食道」という病態を経て発症することが考えられています。
バレット食道は長さが非常に重要で、3cmを境に2種類に分類されます。長さが3cm以上のものは「LSBE(長いバレット食道)」と呼ばれ、「食道腺がん」のリスクが高い状態です。
一方、長さが3cm未満のものは「SSBE(短いバレット食道)」と呼ばれますが、食道がんのリスクは比較的低く、特に1cm未満の場合、発がん率はほぼないとされています。
そのため、特に長いタイプのバレット食道(LSBE)を指摘された場合は、定期的な内視鏡検査を受けるのが望ましいです。

食道がんによる症状

ほとんどのがんと同様に、初期症状がほとんど感じられません。そのため、胃カメラ検査などをきっかけに発見されるケースが少なくありません。
病気が進行すると症状が現れますが、その多くは嚥下に関連するものです。具体的には、食べ物のつかえ感や嚥下困難などの嚥下異常が多く、嚥下時の痛み・しみる感じ・胸やけ・胸背部痛などの痛みもしばしば認められます。食事量が減少するため、体重減少を伴うことが多いです。さらに、食道周囲の臓器へ浸潤すると、咳・血痰・声がれ・肺炎などが起こることがあります。

食道がんが生じる原因

「食道扁平上皮がん」は飲酒や喫煙との強い関連があり、飲酒・喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。特に「お酒を飲むとすぐ赤くなる方」や「以前は赤くなっていたが飲み続けるうちに赤くならなくなった方」は特にリスクが高いと考えられています。
お酒に強いか弱いかは生まれ持った遺伝子できまりますが、日本人の場合、「お酒に強い」方が約50%、「お酒に弱いが鍛えたら飲めるようになる」方が約40%、「全くお酒が飲めない」方が約10%であるとされています。食道がんのリスクが最も高いのは中間の「顔が赤くなるがお酒は飲める」タイプの方です。
また飲酒と喫煙、両方の習慣がある方はより危険性が高いということも知られています。一方で、野菜や果物の摂取により発がんリスクが約10%減少するという報告もあります。
一方、欧米に多い「食道腺がん」は、主に逆流性食道炎を誘因とするバレット食道(食道粘膜の扁平上皮が胃の円柱上皮に置き換わる疾患)を経て発生すると考えられています。
近年、日本でも食の欧米化に伴い、逆流性食道炎や炎症を伴わない非びらん性胃食道逆流症(NERD)の発症例が増加しています。同時に、喫煙者が減少しているため、将来的には腺がん患者数が増加する可能性があると考えられています。
胃食道逆流症は肥満の影響を受けるため、減量などの生活習慣の改善が重要です。

食道がんの検査・診断

食道がんの診断には胃カメラ検査が必要です。初期段階では、ほぼ症状がないために、特に飲酒習慣のある方、喫煙習慣のある方(過去に飲酒・喫煙歴のある方も含む)、過去に長いタイプのバレット食道(LSBE)を指摘された方は、定期的な胃カメラ検査を受けて頂くことをおすすめします。
万が一、食道がんが見つかっても、早期であれば比較的ご負担の少ない治療で完治を期待することもできます。
当院では、内視鏡専門医がすべての内視鏡検査を担当し、先進の内視鏡システムを用いた精度の高い検査をご提供しております。また、鎮静剤を使用してリラックスした状態で検査を受けていただけます。お気軽にご相談ください。

食道がんの治療方法

食道がんを早期の段階で発見できれば、身体への負担が少ない内視鏡治療による完治が期待できます。
しかし、がんが進行している場合は、ステージや身体の状態に応じて、手術・抗がん化学療法・放射線療法などを組み合わせた治療が必要となります。
飲酒・喫煙習慣がある方、熱い飲み物を頻繁に摂る方、過去に長いタイプのバレット食道(LSBE)と診断された方は、食道がんのリスクが高いため、定期的に胃カメラ検査を受けて頂くことが重要だと考えられます。