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糖尿病

糖尿病とは

インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を調整する重要な役割を持っています。食事をすると血糖値(血中のブドウ糖濃度)が上昇しますが、インスリンがはたらくことで血液中の糖が細胞内に取り込まれ、エネルギーとして利用できるようになります。また、インスリンの作用によって血糖値は低下します。
糖尿病とは、このインスリンの作用不足により、慢性的に高血糖状態が持続する症候群と定義されます。
インスリンの作用不足には、大きく分けて1)膵臓β細胞でのインスリン分泌の低下 と 2)肥満や肝障害などによってインスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗性)があります。
高血糖状態が長期間持続すると、血管や神経にダメージを生じ、糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害などの合併症を引き起こします。また、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患の発症リスクも高くなります。さらに、免疫機能の低下もみられ、感染症リスクが高くなることが知られています。
糖尿病は、特に初期には目立った症状がないことが多い疾患ですが、重篤な合併症や疾患を予防するためには、適切な血糖コントロールと生活習慣の改善が重要です。
血糖値が高いことを指摘された方や、糖尿病や糖尿病予備軍と診断されたものの、治療を受けておられない方は、是非一度受診をご検討ください。

糖尿病には2つのタイプが存在します

糖尿病には2つのタイプがあり、1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
どちらも血糖値が慢性的に高くなる疾患ですが、発症の原因や治療法に違いがあります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、おもに自己免疫の異常によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほぼ分泌されなくなって発症します。また、膵臓のα細胞から分泌されるグルカゴンにも異常が生じることが知られています。若年発症が多いですが、大人になってから発症することもあります。。

2型糖尿病

2型糖尿病は生活習慣病の一つであり、おもに生活習慣の乱れが原因でインスリンの作用不足が起こり発症します。(「糖尿病になりやすい」遺伝的素因もあると考えられています。) 

糖尿病各タイプの特徴

  1型糖尿病 2型糖尿病
原因 自己免疫の異常により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなることが原因です。生活習慣とは関係なく発症します。 生活習慣の乱れ(食事・運動不足・肥満)が関与して発症します。
体型 痩せ型が多いです。 肥満の方が多いです。しかし、痩せ型の方もいます。
発症年齢 若い方が多いです。 中高年が多いです。
治療 インスリン療法が必須です。 生活習慣の改善、薬物療法をメインに行います。
必要に応じてインスリン療法を行います。

糖尿病による症状

初期段階では自覚症状が乏しいことが多いですが、進行すると以下のような症状が現れます。症状がある時点で、病状はある程度進行しているため、健康診断で血糖値が高いと確認された方は、無症状のうちに迅速に当院にご相談ください。

以下に当てはまる症状はありませんか

  • 多尿、頻尿
  • 喉が渇く・沢山水分を摂る
  • 体重が減った
  • 疲れやすい、全身倦怠感がある

多尿・頻尿

高血糖が持続すると、腎臓は糖を尿中に排泄しようとします。その結果、尿中の糖が増え、浸透圧の影響で水分が引き込まれ、尿量が増加します。
また、喉が渇きやすくなり水分摂取量が増えることも尿量増加をもたらします。

喉が渇く、沢山水分を摂る

尿量が増加するため、体内の水分量が減少します。喉が渇くため、水分を過剰に摂取してしまいます。

体重が減る

糖尿病による体重減少は、インスリンの作用不足が原因で、身体が適切に糖をエネルギーとして利用できなくなるため起こります。糖をエネルギー源として利用できないため、身体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーを補おうとするため、結果的に体重が減少します。
インスリン分泌が枯渇する1型糖尿病でよく認められる症状ですが、進行した2型糖尿病でも認められます。

疲れやすい、全身倦怠感

糖をうまくエネルギー源として利用できないため、疲れを感じやすくなります。

糖尿病になりやすい方の特徴について

体重が適正体重を超えている方

適正体重を超えている場合、糖尿病の発症リスクが高まることが知られています。適正体重は以下の式で算出できます。
【身長(m)】×【身長(m)】×22=【適正体重(kg)】

内臓脂肪が多い方

内臓脂肪の蓄積による影響は特に大きく、糖尿病の発症リスクを高めることが知られています。内臓脂肪はインスリン抵抗性(インスリンの作用不足)をもたらし、血糖調整機能の低下につながるため、注意が必要です。
内臓脂肪は腹囲とよく相関するため、腹囲を測定することで内臓脂肪の蓄積の程度をある程度推測することができます。男性では85cm以上・女性では90cm以上がメタボリック症候群の診断基準となっています。

高カロリーの食事や間食の回数が多い方

糖質や動物性脂肪が多い高カロリーの食事を頻繁に摂ったり、間食を頻回に摂ると、糖尿病のリスクが高まります。そのため、普段の食事については栄養素のバランスや総カロリーに御注意頂くことが大切です。間食を完全に控える必要はありませんが、血糖値を急激に上昇させる糖質が多く含まれている食品は控え、量や摂取のタイミングにに気を配ることが大切です。

1日の歩数が少ない方

日常的に一定の運動を行うことは、健康維持や疾病予防において重要な要素です。一般的に、歩数が増えると運動量も増加し、健康への好影響が期待できます。
生活習慣病の予防に役立つ目安となる歩数は、成人男性では平均8,200歩/日、成人女性では7,300歩/日とされています。現在では、スマートフォンなどに万歩計の機能が搭載されていることが多いと思います。ぜひ活用されてください。
また、階段の上り下りでは、通常の歩行時(平らな道)の3倍のカロリーを消費することができます。そのため、積極的に階段を使うことをおすすめします。

糖尿病の検査

糖尿病の疑いがある方には、以下のような検査を実施し、問診内容、検査結果症状などを総合的に見てから診断をつけます。
検査結果によっては、別途再検査が必要となることもあります。

空腹時血糖値

朝食を摂らず、食事の影響がない状態で血糖値を測定する検査です。空腹時の血糖が126mg/dLを超えると、糖尿病と見なされます。

75gブドウ糖負荷試験

10時間以上の絶食後、75gのブドウ糖を含ませた水を摂取し、摂取後2時間後に血糖値を測る検査です。ブドウ糖負荷試験において、血糖値が200mg/dLを超えると、糖尿病の疑いがあると判断されます。

随時血糖値

食事の時間を気にせずに、随時血糖値を測定します。随時の血糖値が200mg/dLを超えると、糖尿病として診断されます。

HbA1c

HbA1cは、直近1〜2ヶ月間の平均血糖値を示す、糖化ヘモグロビンの割合です。この値から、血糖管理が十分であったかが判断できます。HbA1cが6.5%を超えると、糖尿病と診断される一つの根拠となります。
HbA1cが6.0-6.4%の方は境界型、いわゆる「糖尿病予備軍」と言われる状態です。この段階では、適切な生活習慣の改善を行うことで、糖尿病発症を予防出来る可能性があります。

糖尿病による合併症

糖尿病が引き起こす病気として、腎臓病、網膜病、神経障害が挙げられます。これらは「三大合併症」とも言われています。
また、脳卒中や心筋梗塞などの大血管障害を合併するリスクも伴います。 糖尿病の確定診断がついた際は、これらの合併症の予防に努めましょう。

糖尿病の患者様に起こりやすい三大合併症

網膜症

高血糖状態が長期間続くと、網膜の微小血管が障害を受け、網膜症を引き起こします。進行すると、視力低下をまねき、失明のリスクも伴います。(若壮年者においては失明の一番の原因となっています。)
適切な時期にレーザー光凝固を行うことで失明を防ぐことができるため、早期発見が極めて重要です。しかし、網膜症はかなり進行しても自覚症状がないことが多いため、適切なタイミングで眼科的精査を受けることが重要になります。

腎症

長期間にわたる高血糖状態が続くと、腎臓の血管が障害を受け、糖尿病腎症を発症します。腎臓で血液をろ過する糸球体という構造がダメージを受けることで、腎機能が低下します。糖尿病腎症は末期腎不全の主要な原因の一つです。

神経障害

長期間の高血糖状態が神経にダメージを与え、糖尿病性神経障害を発症します。この合併症は頻度が高いものの、血液検査や尿検査などの検査に反映されにくいため、自覚しづらいことが多いのが特徴です。
症状は多岐にわたり、異常知覚(感覚低下、しびれ、ジンジンとする感じ)や痛みを伴う有痛性神経障害などが代表的です。また、自律神経も影響を受け、めまい、起立性めまい、膀胱機能障害、消化器機能低下などを起こす恐れがあります。

その他

高脂血症や高血圧同様、糖尿病が動脈硬化を進め、大動脈障害を引き起こす恐れがあります。また、がんのリスクを高めることも知られています。

大血管障害

糖尿病は動脈硬化の重要な危険因子の一つです。動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患に加え、脳出血や脳梗塞など深刻な疾患を引き起こすリスクが高まります。動脈硬化については、血糖管理に加え、高血圧・脂質異常症・喫煙などの危険因子の適切な管理が重要です。

糖尿病の治療方法

治療法は糖尿病のタイプによって異なります。

1型糖尿病の場合

インスリン分泌が欠乏しているため、インスリン補充による血糖コントロールが必須になります。

2型糖尿病の場合

食事療法が非常に重要です。肥満がある場合には、摂取カロリーの制限が必要になります。運動療法も重要ですが、状況によっては運動の強度や種類に配慮が必要となる場合があります。

食事療法や運動療法で十分な改善が得られない場合には、薬物療法を併用することを検討します。高血糖の状態が重篤である場合や、重篤な感染症を伴っている場合などには、早急なインスリン治療が必要となることもあります。

食事療法

食事療法は非常に重要で、常に治療の根幹をなします。肥満がある場合には、摂取カロリーの制限が必要になります。食事の栄養バランスにも配慮が必要です。
噛む回数を増やしたり、寝る直前の食事を抑えたりするなど、食べ方にも気を配りましょう。間食や血糖値を急激に上昇させる食事は糖尿病を悪化させる危険がありますので注意が必要です。

運動療法

有酸素運動と筋力トレーニングをお勧めします。(状況によっては運動の強度や種類に配慮が必要となる場合があります。) 
適切な運動習慣は血糖値の改善に寄与するだけでなく、心身によい影響をもたらすことが知られています。また、筋肉を増強することで、基礎代謝が増え、糖尿病の改善が期待できます。

薬物療法

糖尿病の治療は日々進歩しており、糖尿病のコントロールだけでなく、腎臓や心臓にもよい影響をもたらす薬剤が増えています。近年では、糖尿病の病態にあわせ、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などの薬剤が選択されることが多くなっています。

インスリン療法

体内でインスリンを分泌能力が低下している場合や、高血糖が原因で重篤な状態に陥っている場合などには、インスリン療法が必要となります。インスリンの導入は入院で行われることが多く、食事療法のもとで細かく血糖値をはかりながら、最適なインスリン量が決定されます。インスリンには、速効型、超速効型、持続型、混合型など、複数のタイプのものがあります。