大腸ポリープについて
大腸ポリープは大腸粘膜から発生した、腸の内側に隆起する病変を指します。自覚症状はほとんどなく、便潜血検査の陽性を契機に大腸カメラで発見されたり、他の目的で大腸カメラを行った際に偶然見つかることが多くあります。
大腸ポリープには様々な種類がありますが、「腺腫」や「SSL」とよばれるタイプのポリープは、時間の経過とともに増大し、がん化リスクが上昇することが知られています。全ての腺腫やSSLががん化するわけではありませんが、内視鏡でポリープを切除することで、将来的な大腸がんによる死亡リスクを低減できることが実証されています。
サイズがある程度大きなもののみを切除するという考え方もありますが、がん化リスクのあるポリープは小さなものでもすべて治療し、ポリープのない状態(「クリーンコロン」とよばれます)を維持することが望ましいとする考え方もあります。
大腸ポリープによる症状
大腸ポリープを発症しても、自覚症状がほとんどありません。ただし、ポリープが大きくなり、硬い便によって損傷を受けると、わずかに出血することがあります。
便潜血検査は、便中に微量の血液が含まれていないかを確認する検査です。出血の原因は、大腸ポリープや大腸がんだけでなく、痔による肛門からの出血も考えられるため、慎重な判断が必要です。血便の原因を明らかにするには、内視鏡検査が必要です。
一方、便潜血検査が陰性であっても、病変が存在する可能性があります。大腸ポリープや大腸がんが小さく、出血が見られない場合もあるためです。
内視鏡検査で見つかったポリープは、その場で治療することも可能です。(サイズが大きなポリープや大腸がんの可能性が高いポリープなどは入院での切除が望ましいです。そうしたポリープが見つかった場合には適切に高次医療機関にご紹介させて頂きます。)
早期発見と早期治療で生活の質を維持します
大腸カメラを受けたほうが良い理由は、大腸がんを早期発見できるといったこともありますが、何より前がん病変と考えられる「腺腫」や「SSL」などのポリープを内視鏡で切除することで将来的な大腸癌のリスクを低減できる可能性がある点にあります。
大腸がんの多くは進行するまでほとんど症状がないため、意識的に大腸のチェックを受けることが非常に重要です。特に、便潜血検査が陽性となった方はもちろん、便秘や下痢などの便通異常が続いている方、便が細くなったと感じる方、腹痛やお腹の張りが気になる方、また血縁の方に大腸がんの既往がある方がいらっしゃる方は是非とも大腸カメラを受けるようにされてください。
症状がない方でも検診で大腸カメラを受けて頂くことが可能ですので、ご相談ください。
大腸がんが進行すると、生活の質が著しく低下する可能性があるため、早い段階での発見が極めて重要となります。
大腸ポリープの切除方法
大腸ポリープの切除手術は、原則として日帰りで受けていただけるため、入院は不要です。内視鏡検査中に発見された大腸ポリープは、その場で切除できるため、検査と治療を同時に行うことが可能です。
切除したポリープは回収し、病理検査を実施して確定診断を行います。ただし、サイズが大きなポリープや、大腸がんの可能性が疑われるポリープなどは、入院での切除が望ましいため、必要に応じて高次医療機関にご紹介いたします。また、ポリープの数が非常に多い場合は、安全のため複数回に分けて治療を行うことがあります。
ポリペクトミー
輪っか状のワイヤー(スネア)を用いて、高周波電流でポリープを切除する方法です。内視鏡スコープの先端からスネアを出し、ポリープを囲んで締め付け、高周波電流で焼き切ります。電気メスと同様に止血効果がありますが、通電によって周囲の組織が熱を帯び、炎症・出血・穿孔などが起こる恐れがあります。
コールドポリペクトミー
スネアを使用してポリープを囲んで締め付け、物理的に切除する方法です。大型の生検鉗子を用いて摘除することもあります。ポリペクトミーとは異なり、高周波電流を使用しないため、周囲の組織に熱ダメージを与えず、出血や穿孔などの合併症リスクを軽減できます。サイズが小さなポリープや、大腸がんの合併がないと思われるポリープなどに適応される切除方法です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
ポリープの下の粘膜下層に生理食塩水を注入し、ポリープを隆起させます。隆起させたポリープにスネアをかけて囲み、締め付けたうえで高周波電流を通電して切除します。ポリープの下には生理食塩水が注入されているため、通電によるポリープ周囲へのダメージをおさえながら、切除することが可能です。
コールドポリペクトミーより深く切除できるという利点があるので、大腸がんの合併が疑われる場合にはEMRを選択し、確実な切除を期します。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
早期大腸がんが疑われる病変などに対して選択される治療法です。粘膜下層にヒアルロン酸などを注入し、病変を浮かせて剥離するためのスペースをつくります。その後、電気メスで病変周囲の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離して病変を一括切除します。
この手術は基本的に入院治療が必要となるため、必要だと判断した場合は適切な高次専門医療機関にご紹介させて頂きます。
ポリープ切除後における注意事項
ポリープ切除手術は、発見されたその場で行うことが可能で、日帰りで実施できます。
なお、手術後は安静が必要であり、数日間は一定の制限を守っていただく必要があります。大腸カメラを受けて頂く際には、ポリープ切除を同時に行う可能性もありますので、検査日を決定する際は、仕事や旅行などのスケジュールに十分ご注意ください。
手術後の制限については、下記の表をご確認ください。
食事 | 手術当日は、油や香辛料などの刺激物を避けるようにしてください。大きなポリープを切除した場合には絶食とさせて頂くこともあります。 |
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お風呂 | 手術の翌日から入浴が可能です。当日はシャワーだけを利用してください。 |
アルコール | 医師が指示した期間中は飲酒を控えてください。 |
運動 | 激しい運動や腹部に負担をかけるような運動は避けましょう。 |
旅行・出張など | 長時間の移動や飛行機を使った移動は、体への負担が大きくなるだけでなく、緊急時の対応が難しくなる恐れがあるため、避けるのが望ましいです。 中でも飛行機での移動は、気圧の変化が大きいため、出血リスクを考慮するために避けてください。検査後1週間は遠出を控え、スケジュールを調整してください。 |
検査にかかる費用
1割負担 | 3割負担 | |
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日帰りの大腸ポリープ切除手術 | 9,000円~12,000円程度 | 27,000円~34,000円程度 |