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高血圧症

高血圧症とは

高血圧は、血液が流れる動脈の内側から外側にかかる圧力が慢性的に高い状態を指します。
脂質異常症や糖尿病と同様に、主要な生活習慣病として広く知られていますが、高血圧は脳心血管病(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血および心疾患)の最大の危険因子です。血管性認知症のリスク・腎臓病の発症リスクにもなります。

高血圧症の恐ろしい点は、他の生活習慣病同様、自覚症状がほとんどないことです。そのため、折にふれて血圧を測定することをおすすめしております。適切な血圧コントロールを行うことで、様々な重篤な疾患のリスクを減らすことが期待出来ます。

検診で血圧が高いと指摘された方や、以前から血圧が気になられている方は、お気軽にご相談いただければと存じます。

ご自宅での血圧測定と院内での測定の違いについて

診察室血圧と診察室外血圧

血圧は、ストレスや緊張、身体活動などによって容易に変動するため、測定する場所や環境を考慮にいれることが大切です。
そのため、医療機関で測定する「診察室血圧」と、ご自宅などで測定する「診察室外血圧」に分けて評価されます。
一般的には、診察室血圧が140/90mmHgを超え、診察室外血圧が135/85mmHgを超えると、高血圧と診断されます。

ご自宅での正しい血圧測定方法

血圧は容易に変動するため、正しく測定することが大切です、 正しい血圧測定方法を以下にお示しします。

血圧計

日本高血圧学会のガイドラインでは、腕に巻き付けて測定する「上腕式」の血圧計が推奨されています。

測定環境

  1. 静かで適当な室温の環境(特に冬、寒い部屋での測定は避ける)
  2. 原則として、背もたれつきの椅子に脚を組まずに座って1-2分の安静後
  3. 会話をかわさない環境
  4. 測定前に喫煙、飲酒、カフェインの摂取は行わない
  5. カフ位置を心臓の高さに維持できる環境

測定条件

  1. 朝:起床後1時間以内に測定する。 排尿後・朝の内服前・朝食前・座った状態で1-2分安静にしてから測定。
  2.  晩:就寝前に測定する。 座った状態で1-2分安静にしてから測定。

測定回数

原則として2回測定して、その平均をとる。

「高血圧治療ガイドライン2019」について

血圧の目標値(降圧目標)

「日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン 2019」では、血圧の目標値(降圧目標)を「年齢」と「基礎疾患」によって以下のように定めています。

  診察室血圧(mmHg) 家庭血圧(mmHg)
75歳未満の成人
脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や納主観動脈閉塞なし)
冠動脈疾患患者
慢性腎臓病(CKD)患者(尿蛋白陽性)
糖尿病患者
抗血栓薬服用中
<130/80 <125/75
75歳以上の高齢者
脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や納主観動脈閉塞あり、または未評価)
CKD患者(蛋白尿陰性)
<140/90 <135/85

降圧薬治療を行った患者様を対象にした検討では、収縮期血圧(高い方の血圧)が10mmHg、または拡張期血圧(低い方の血圧)が5mmHg低下すると、以下のようなリスク減少が確認されています。

  • 心血管イベントのリスク:約20%減少
  • 脳卒中のリスク:約30-40%減少
  • 冠動脈疾患のリスク:約20%減少
  • 心不全のリスク:約40%減少
  • 全死亡リスク:約10-15%減少

血圧の適切なコントロールが、こうした重篤な疾患のリスク低減に重要であることが示されています。

血圧の作用

血圧とは、心臓から送り出された血液が流れる動脈の内側から外側にかかる圧力を指します。この圧力によって、血液が全身に行き渡ります。
生命活動の維持には欠かせないものですが、血圧が高すぎる状態が慢性的に続くと、血管を徐々に痛めてしまい、様々な問題が引き起こされる可能性があります。

収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)

「収縮期血圧(最高血圧)」は、心臓が収縮して血液を全身に送り出す際に、動脈の内側から外側にかかる圧力をさします。一方、「拡張期血圧(最低血圧)」は、心臓が拡張した状態で、動脈にかかっている圧力をさします。
どちらの血圧も重要ですが、特に上の血圧である「収縮期血圧」が高いと脳卒中や心疾患のリスクが高まることが知られています。

高血圧症には2つのタイプがあります

本能性高血圧症

本態性高血圧症とは、明確な原因が特定できない高血圧のことをさします。高血圧症の約85-90%を占めています。本態性高血圧症は、遺伝的要因と生活習慣の乱れが関連しあって発症すると考えられています。

リスク要因の一覧

  • 肥満
  • 過剰な飲酒・喫煙
  • 過剰な塩分摂取
  • 野菜や果物の不足
  • ストレス
  • 運動不足

二次性高血圧症

本態性高血圧症とは異なり、二次性高血圧症は明確な原因による高血圧症をさします。以前考えられていたよりも頻度が高いことが分かってきており、全高血圧患者様の少なくとも10%以上を占めると考えられています。

二次性高血圧症の原因は多岐にわたりますが、代表的な疾患は以下のものがあります。

①腎臓の血流障害

腎血管性高血圧症(腎動脈の狭窄による血流障害)

②内分泌異常(ホルモンの異常)

原発性アルドステロン症(アルドステロンの過剰分泌)・褐色細胞腫(カテコラミンの過剰分泌)・クッシング症候群(コルチゾールの過剰分泌)・甲状腺機能異常(甲状腺ホルモンの異常)

③その他

腎実質性高血圧(慢性腎臓病などによる腎機能低下)・睡眠時無呼吸症候群(低酸素状態による交感神経の活性化)・薬剤誘発性高血圧(ステロイドやNSAIDsなどの薬剤による影響)

高血圧症による症状

高血圧症の恐ろしい点は、他の生活習慣病同様、自覚症状がほとんどないことです。そのため、折にふれて血圧を測定することをおすすめしております。
検診で血圧が高いと指摘された方や、以前から血圧が気になられている方は、お気軽にご相談いただければと存じます。

更年期の女性に多い高血圧(更年期高血圧)について

更年期と高血圧症には密接な関係があります。
特に女性の場合、更年期に入るとエストロゲンというホルモン(女性ホルモン)が減少しますが、このことが血圧の変動に影響を与えることが知られています。
ほかに、自律神経も乱れやすくなることも血圧に影響を与えます。
更年期に入られたら、特に血圧の変化にはご留意頂いた方がよいと考えられます。

隠れ高血圧に気を付けましょう

診察室で測定した血圧が正常範囲内であるにも関わらず、ご家庭や職場などで測定すると高血圧症に該当する状態を「隠れ高血圧」といいます。ストレスや緊張、睡眠時無呼吸症候群、生活習慣の乱れなどが原因と考えられています。気にかかられる方は、ご家庭などで定期的に血圧を測定されることをおすすめします。

高血圧症によって発症リスクが高まる疾患

血圧が高すぎる状態が慢性的に続くと、血管を徐々に痛めてしまい、様々な問題が引き起こされる可能性があります。

動脈硬化

高血圧と動脈硬化は密接に関係しています。高血圧の状態が続くと動脈に負担がかかり、動脈硬化が進行します。逆に、動脈硬化が進行すると血管が硬くなり、さらに血圧が上昇するという悪循環がうまれます。

脳卒中

高血圧は脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の最大の危険因子です。脳の血管が詰まったり、破れたりすることで発症する「血管性認知症」のリスクも高めることが知られています。
脳卒中は生命に関わることや、重篤な後遺症をのこすことがある疾患ですので、血圧を良い状態にコントロールしておくことが非常に重要だと考えられています。

心不全・冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)

高血圧の状態が続くと、心臓への負担が増加し、心不全の原因となります。さらに、脂質異常症、糖尿病、喫煙など他のリスク因子が重なると、冠動脈の動脈硬化が促進され、心筋梗塞や狭心症などといった冠動脈疾患のリスクも高くなります。
心不全のリスクや心疾患による死亡リスクを低減するためには、血圧を十分かつ持続的に下げることが重要と考えられています。

腎不全

高血圧と腎臓は相互に密接に関連しており、高血圧の成因に腎臓はきわめて重要な役割を果たします。
一方、高血圧は腎障害を引き起こして慢性腎臓病(CKD)の原因となり、いったん慢性腎臓病が発症すると高血圧が重症化するという悪循環が形成されてしまいます。

その他

大動脈解離や大動脈瘤、眼底出血などのリスクも高くなります。